さて、前々回から引き続き技術士二次試験、筆記試験の解答文章を作成しているわけですが、今回は問3「解決策を実施した後に新たに生じるリスクと対策」を書いていきます。
技術士筆記試験に合格した私が実際に行っていた解答文章作成方法に従って、作成してみるというこの企画もついに折り返しです。
では早速今回もはじめていきましょう。
おさらい
技術士筆記試験に合格した私が実際に行っていた解答文章作成方法に従って、過去問に対する解答文章を問1から順に作成しています。
対象とする問題は実際に過去に出題されたテーマである「インフラメンテナンス」です。
そして、前回までに挙げた課題と解決策は以下の通りです。
課題:官民連携、インフラメンテナンスの高度化、インフラストックの適正化
解決策(インフラメンテナンスの高度化を対象として):予防保全型のインフラメンテナンスへの転換、地方公共団体の体制整備、デジタル化、新技術の導入、関係者間の調整
新たに生じるリスク
解決策を実施した際に生じる新たなリスクを考える時に、ポイントとなるのは3つです。
どんな解決策についても、予算、人材、時間の3つの観点から考えると、新たに生じるリスクが見えてきます。
予算の観点
はじめに予算の観点から見たリスクとはどんなものでしょうか?
前回の記事で挙げた解決策(上記)の中で言うと、デジタル化が書きやすそうなのでそれについて解説します。
ちなみに新たに生じるリスクは、一つの解決策についてのみ書けばいいので、一番書きやすい解決策について考えましょう。
デジタル化には、ICT建設機械やドローンの導入、システム構築など従来以上の初期費用がかかってきます。
それらによって生産性が向上し、人件費削減や工期短縮による工事費減少が見込めるとしても、目先の費用の大きさから敬遠され、結果としてデジタル化の遅れやインフラメンテナンス全体の遅れに至る恐れがあります。
そのような予算の問題に対する解決策としては1. 予算の増加、2.コストの低減が挙げられます。
予算の増加
予算とは、工事で言うと受注金額のことですね。
それを増加させるのは社内だけのことじゃ済まないし一見難しそうで、解決策として書くのはちょっと違うのかなと思うかもしれませんが、これも書いてOKなんです。
私も技術士筆記試験対策で情報を集めていた頃は、こんなの技術士になったとて私1人でできることじゃないし、書いていいのかな?と思っていました。
ですが、技術士対策セミナーを主催する講師もこれを対策として説明していたので間違いありません。
技術士の扱う業務の大きさを考えると当然他の技術士との協働も含めて業務範囲ですし、また、解決まで何十年もかかりそうなものもアリです。
予算増加のためには、発注者が生産性向上施策にかかる費用を見込んだ積算の上で発注する必要があります。
つまり、発注者の積算基準の見直しが対策として挙げられす。
コストの低減
もう一方で、生産性向上施策にかかるコスト低減も対策の一つです。
システム利用料などはより多くの現場がそれを利用すれば、運営にかかる費用を多くの利用者で割り勘することになるのでコストは減りますね。
また、後述しますが、プレキャスト部材や工場製作品は事前に工場で作っておくので、現場での工期を短縮したり、現場施工よりも品質のばらつきを無くして高めるなど生産性向上効果があります。
それらに関しては、部材の規格を標準化することで製作費用を抑えることができます。(オーダーメイド品よりも予め決まった規格のものを作る方が安いのと同じ原理)
「規格の標準化」は国として進めているもので、技術士試験でトップクラスに重要なキーワードなので忘れないように。
人材の観点
問2で挙げる解決策が何にせよ、人手不足により実施できないリスクがあります。
私が作成した解答文章では、キーワードを入れ込むために、人手不足になっている要因を含めて書くようにしました。
建設業界の人手不足は実際には3つの種類の人手不足があります。
まず、少子高齢化や建設業界への入職者の少なさ、悪い労働環境による若手社員の離職、などによる労働力の絶対数の減少です。
これに対しては、新規入職者の増加と若手技術者の離職防止の2つの観点から対策が可能です。
デジタル化による現場仕事の減少や竣工現場でのツアーに加え、これまでの3K(きつい、汚い、危険)のイメージから新3K(給料、休暇、希望)のイメージを発信して転換を促すなどの対策により新規入職者を増加させます。
若手社員の離職防止については、週休2日の実現や給料の増加、社会保障の整備、時間外労働時間の削減など、労働条件の改善が有効です。
以上は私の考えた対策なので、他にも、熟練技能者のほとんどが今後定年を迎えることに対して、ICT建設機械が若手技能者の技術力不足を補うことで、熟練技能者と変わらない品質を保つなど、自分が思う対策を考えてみてください。
時間の観点
既存のインフラストックは日々老朽化していき、メンテナンス需要は今後加速度的に増加していくことになります。
メンテナンスにかかる時間によってはメンテナンス需要に対処しきれなくなるリスクがあります。
これについては前回説明したような「優先順位づけ」や「インフラストックの適正化(廃止や機能転換)」によってメンテナンス数を減らすと言うのが対策として考えられます。
ここで、優先順位づけについて書く際には、優先順位づけはあくまでも「全部メンテナンスするけど、重要なやつから順番にやろう」ってだけなので、絶対数は変わってないことに注意してください。
順番に少しずつ修繕工事をするため、一斉に人材が必要となるような波が無く、安定的に必要最小限の人材で済むというイメージです。
技術士筆記試験では、誤解がないようにというのがすごく大事です。
自分で間違って理解しているのもそうですし、理解していても間違って伝わってしまうと減点されてしまいます。
先ほどのものも、優先順位づけすることで必要人材の絶対数が減少するという書き方をしてしまうと、「ちゃんと理解せずに技術士試験のキーワードだけ参考書で勉強して、試験のための勉強だけで臨んでいるんだな」と取られ、減点される可能性があります。
以上今回は技術士二次試験の筆記試験問題について、解答文章を作成するシリーズ、問3「解決策を実施した上で新たに発生するリスクと対策」を解説しました。
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